母情的劇情簡介 · · · · · ·
斉藤寅次郎監督の作品にほぼ皆勤賞の清川虹子が映畫初主演をしたシリアスな母もの。山田五十鈴、徳川夢聲、古川緑波、飯田蝶子ら蕓達者たちが友情出演している。助監督を石井輝男がつとめている。単なる母ものではなく、清水宏監督の得意とする子供映畫でもある。ラストシーンがあまりにも素晴らしくて、何度も見てしまった。
父親の違う3人の子供を一人で育てるとし子(清川虹子)は、友人のみつ子(山田五十鈴)と一緒にバーを開店しようと計畫している。しかし、父親はいないし、3人の子供たちを誰かに預けてしまおうと考える。親類を訪ね、下の二人はどうにか預けたが、あと一人長男がまだ殘っていた。困った彼女は自分の乳母だった年寄りを訪ねるが・・・
今風に言えば「育児放棄」の物語なのだが、そんな上っ面な言葉を簡単に吹き飛ばしてしまうほど、清水監督の演出が素晴らしい。子を預ける旅の途中で出會った旅蕓人たちが乳飲み子を大事にしながら旅をしている情景をみて、人生の再出発を図ろうとしつつも心が揺れる母親を清川虹子が熱演している。しかし、それ以上に自然で素晴らしい演技をしているのが3人の子供を演じる子役たち。
清水監督は、人を歩かせるのが好きである。『蜂の巣の子供たち』(1948年)でも、復員兵と子供たちが旅をするが、本作品でも、母と子がバスにも乗るが歩く歩く。そして、旅一座の座員たちが峠道を歩く。清水監督は、「映畫ってえのは、俳優だけが主役じゃないんだ。草も樹も、道も風も雲もみんな生きてる。畫面に寫ってる全部が大事なんだ」と述べたそうだが、人間さえもそのような自然の中の一員と捉えようとしているみたいだ。
そして、その映畫の最大の見所は、ラストシーン。ネタバレで申し訳ないが、清川が子供たちを自分のそばに置いて育てようと考えなおした後、一人の殘された長男が外に出て立ち小便をするシーン。このシーンでは、スクリーンの中で誰かが泣いているわけでもない。しかし、寫生文的な絵の中で、観客に子供と母の気持ちを想像させるだけで、泣かせてしまう。清水監督の演出に思わず拍手である。